魅力的な機械
ぺガス スクロール・バンドソーの導入
―開封と小さな工房への設置―
Pegas Scroll Band Saw, unboxing and setup in a very small workshop
普段からバンドソーを多用した作品作りを楽しんでいます。使っているバンドソーはタイヤ径14インチのKERV DF-14((株)オフ・コーポレーション)で、アマチュア工房で使う機械としては大きい方です。購入してもう15年近く使っていますが、しっかり調整すれば十分に働いてくれます。
話がそれますが、バンドソーは昇降盤に比べて、高齢者に優しい機械です。ブレード(のこ刃)が高速で動いていますが、昇降盤のように刃がむき出しになって高速回転していたり、キックバックで木片が飛んでくるということもありません。なにしろあの大きな音には恐怖すら感じます。バンドソーは音もずっと静かで夜中の作業にも気兼ねがいりません。
また、バンドソーの特徴の一つは曲線切りができることです。ブレードに刃巾の細いものを使えばいろいろな作品に使えます。とは言え、制限があります。私が使っているのは、もともと、刃巾10mm程度のブレードで使うのが標準的な使い方の機械です。刃巾3mm程度のブレードまで装着できますが、なかなか扱いが難しくて、6mm程度が限界です。したがって、5mm程度以下のRの小さな曲線切りは難しく、糸のこ盤を使うことになりますが板厚が制限されて諦めることが多いです。
そこで、見つけたのがぺガス(Pegas)と言う欧州の会社のスクロール・バンドソー(Scroll Band Saw)です。Pegasは素人DIYerには高級糸のこ盤で有名で、スイスの会社らしいのですが、実際に作っているのは台湾の会社ようです。台湾は世界中のブランドのDIY機器を作っていますね。このスクロール・バンドソーは構造はバンドソーですが、性能や用途は糸のこ盤に近い機械です。ブレードも刃巾1~3mm、刃厚0.36~0.5mmと超細いのがそろっていて糸のこ盤と同程度の細かい曲線切りまで期待できそうです。加えて最大加工高さは150㎜となっていますから、バンドソー並みです。
というわけでとうとう入手しました。入手したのはいいのですが大変重たいのです。本体の主要な部分が頑丈な鋳鉄でできていて大きさの割には重量があります(本体重量77㎏)。普通のバンドソーでは考えられないような細いブレードをガイド溝に正確にはめて安定して高速に回すためには設計上の精度と共に、たわみの無い剛性の高い構造が必要なのだと思います。しかし、私のむささび工房は工房と言うよりも物置小屋で、狭くて結構多くの機器がひしめいています(工房紹介YouTube)。置き場が限られるだけでなく二人係で大きなものを運び込める余裕はないし、そもそも高齢者の私一人で何でもしなければならない環境です(”弘法は工房を選ばず” なんてね)。
今回はいろいろと工夫しながらこの魅力的な機械を設置しましたので、その過程を記録しました。同じような環境の同好の士は多いと思いますので、参考になれば幸いです。本体のサイズ等の仕様はオフコーポレーションの商品ページに掲載されています。
到着
先ず、配送業者から届いた梱包を移動するために台車を用意しました。それも2台並べて使いました。
台車が無ければとても一人では動かせません。ちなみに、梱包の重さとサイズは、
梱包重量:82.0kg
梱包サイズ:幅57cm x 長さ114cm x 高さ39cm
です。とりあえず工房の前までゴロゴロと動かしました。
開封
とても工房の中では開封できない大きさなので、晴れた日に外で開封することにしました。梱包の上には日本語の説明書が付けられています。組み立ては危険なので二人で作業するようにと注意書きがありました。ゴメンナサイ。
先ず、台となるスタンドの部品が出てきます。あとで説明しますが、今回はこのスタンドは使いません。
続いて
・テーブル取り付け台(Table-Tilt Bracket)
・付属のブレード# 9
・集塵ダクト取り付け口(Dust Outlet)
・リブ2本(本体を台に固定するときにナットに挟む金属板)
が出てきます。ブレード は2種類付属していますが、# 12が出荷時に本体に取り付けられています。
# 9 :刃厚0.44mm,刃巾1.34mm、刃数10.5/インチ
#12:刃厚0.50mm,刃巾2.00mm、刃数8.9/インチ
そして、テーブルです。これは結構重いので傷つけないように工房内へ運び込みます。
本体運び込み
最後に、本体が姿を現します。真っ黒なモータがやけに大きいのが目立ちます(頼もしい)。持ち上げようと試みましたがとても無理です。この年齢になるとちょっと腰を痛めても治るのに長引き、その間運動もできなくなると益々筋力が落ちてしまいます。そこで段ボールごと工房内へ引きずり込み、中で立てて段ボールと発泡スチロールを取り除くことにしました。実態は取り除くというより剥ぎ取るというような感じになりました。
そのあと本体を工房内の一番の難所である狭い場所を通って設置位置へ移します(押し込みます)。モータを含めた本体の厚さ(実測したら約34cm)がデータで示されていなかったので心配していたのですがギリギリ通すことができてホッとしました。
台の製作
この機械を椅子に座って落ち着いて操作をしたいので、付属のスタンドは使わず、低い台を作ることにしました。約25cmの高さの台をかませるとテーブルが丁度良い高さになることがわかりました。
手元にあった合板を活用して作ることにしました。なにしろ重量物なので頑丈に作ります。
台にはキャスター付きベースを付けることにしました。狭い工房では使っていないときには壁際に置いておかなければならないので必需品です。このモービルベースMB500というキャスター付きベースのキットはぺガスには含まれていません。オフコーポレーションで別途購入しました。組み立ても簡単で、サイズの変更幅も広いので使いやすいです。
さて、台を作ったのはいいのですが、この上にどうやって持ち上げるかが問題です。とてもヨイショと言って持ち上げられる重量ではありません。工房内の厚い木片を集めて、機械の片足ごとに木片をあてがい、傾けてはもう一方の足に木片を挟み、これを3回繰り返して台の高さに届くようにして、最後は台の上へ押し込みました。
台への取り付けは、付属のリブを台に差し込んで、付属のボルトとナットで締めます。心配していたボルトの長さも、20mmの板厚いの台を挟んでも十分に余裕があり助かりました。キャスターにはストッパーが付いているのでしっかり固定できます。地震などでふらふら動いても困るので安心です。キャスター付きベースを含めた高さは約25cm、幅35.5cm、長さ38.5cmに仕上がりました。
組み立てと調整
集塵ダクト取り付け口(Dust Outlet)
これは本体下のタイヤカバーに取り付ける構造です。取り付けは簡単ですが、カバーを開けるたびにダクトが一緒に動く構造なのでちょっと不満です。この位置が一番集塵効率が良いのならしかたありませんが・・・。
ブレード位置の調整
テーブルが付く前に行った方が楽なので先にこの調整をします。本体には#12のブレードが取り付けられています。まず、普通のバンドソーと同様に、本体上部のノブを回してブレードにテンションを与え、その状態で裏のノブでブレードがタイヤの中央に安定的に位置するよう調節します。
次に、ブレードガイドの調節です。ブレードガイドは写真のようにベアリングに切ったガイド溝にはめ込む構造です。この溝は使用するブレードによって異なるので、ブレードを変更する際にはベアリングの向きの変更あるいはベアリング自体の変更が必要になります。ベアリングは中心からずれた穴にボルトで取り付けられているので、それを緩めて前後の位置を調節できます。溝に丁度入るぐらいに調節し、ブレードの背に力がかからないようにしておきます。上と下のガイドを同じように調整します。
テーブル取り付け台(Table-Tilt Bracket)
これにはテーブルを左右に傾斜できるように受け台が付いています。テーブルの左右の傾斜はこれで微調整ができますが、前後の傾斜は、この取り付け台自身の取り付け角度で微調整しなければならないので、とりあえず仮止めとなります。
テーブルの取り付け
ブレードが張られているので細心の注意が必要です。説明書には絶対に一人では行わないようにと書いてあります。重ねてゴメンナサイ。重たいテーブルを一人で持って、ブレードに触れずにテーブルのスリットを通して所定の向きに回して入れ込むのは相当神経を使いますが頑張りました。でもテーブルの裏についているボルト(ぶら下がった状態で付いている)2本を取り付け台の受け台の穴に通すのは、上からその部分が見えていないので大変難しかったのです。体がふらつかないように気を付けて両方のボルトが受け台の穴に通るように静かにおろしていきます。ここでやっと手を離すことができます。
星状のノブ(ナット)を下からこのボルトに入れて締め付けてテーブルを固定します。最後にインサートをはめ込みます。インサートはブレードの通る開口幅の大小異なる2種類が付属しています。テーブルを傾けて使う時は開口幅の大きい方を使うことになります。
ブレードとテーブル角度の調整
これは実際の作品作りにとって最も重要です。左右の角度はテーブルのティルト機能で簡単に調節できます。問題はテーブル前後の傾き(のこ刃のたて方向)です。これは基本的には機械の設計段階で直角が出ているはずですが、上下のタイヤ上のブレードの位置のわずかな違いで実際に測ると少し狂っています。通常のバンドソーならば全く問題にならない程度です。しかし、このバンドソーのブレードは大変薄いので、パズルのブロックなどを切り抜くことを考えると、わずかの角度ずれでも、ブロックのはめ具合に影響が出るはずです。
具体的な調整方法が取説に書いてありました。テーブル取り付け台の片側と本体との間にペーパ-等の薄いものを挟んで調節します。したがって何度かカット&トライが必要です。そのたびに、テーブルを取り外すのは大事なのでテーブルが付いたままで、テーブル取り付け台のナットを緩めて隙間に調節用のペーパ-を挿し込んで締め直します。ちょっと大変ですが労を惜しまなければできます。狭い場所なので取り付け台のナットを回すにはソケットレンチやスパナ-が何種類かあると作業がしやすいです。
集塵ダクトの取り付け
バンドソーに集塵機は必需品です。集塵ダクト取り付け口の外径が63mmとなっているので内径65mm径のダクトがそのまま取り付けられるはずですが、少しきつかったので、手元にあったアダプターをかまして取り付けました。集塵機は既存のバンドソーや木工旋盤と共用なので、ダクト分岐用のアダプターやシャッターを組み合わせて使っています。
これでやっと、使える状態になりました。とりあえず簡単なパズルを試し切りしてみましたが快適です。
2×4のパイン材を縦に高さ13㎝程度で切ってにみましたが、刃が細いので慎重に動かせばほぼ直角に曲げていくことも可能でした。切り口は大変綺麗で仕上げのサンディングが必要ないくらいです、また、既存のバンドソーだけのときに行っていた、面倒なブレード交換の回数を減らすことができます。