懲りずに新しい機械を投入しました
– ペガス 糸ノコ盤 Pegas Scroll Saw –
むささび工房に新しい機材が導入されました。なんと、糸ノコ盤です。糸ノコ盤は既に20年以上前から工房の片隅にありますが、あまり使っていませんでした。なのに今回新しく導入したのは、ひとえにそのメカニックのすばらしさに魅了されてしまったからです。もちろん、素晴らしいメカニックのおかげで性能も抜群です。
糸ノコ盤はその機構によって大きく3種類に分けられるようで、(株)オフコ―ポレーションさんのホームページにアニメを使った機構の説明ががあります。
バネ式、パラレルアームシステム(カム式)、パラレルリンクシステム(カム式)の3種類に分類されています。
この中で今回私が飛びついた糸ノコ盤は、パラレルリンクシステム(カム式)を採用しています。パラレルアームシステムの改良版です。
特徴1 パラレルアームシステムに比べ複雑な構造で価格もその分高い(従って機種が少ない)ですが、上下に動く部分が限定されているので、振動や騒音が少なく、動作音はとても静かにできるとのことです。ふところの 大きな機械にも有利でしょう。Pegas Scroll Sawのこのシリーズには、ふところの深さによって、30インチ、21インチ、16インチの3種類が用意されているようです。
日本で販売されているのは16インチだけだと思います。それでも結構大きいので。30インチはどんな工房で使われるのでしょう。ふところが深いほど大きな板を扱えるわけですが、きっと店舗の大きな看板などを作るプロの職人さんの工房でしょう。
特徴2 もう一つ面白い機構は、作業盤とブレードの角度を、ブレードの方を傾けて実現しています。私の知る限り、これまでの糸ノコ盤では作業盤の方を傾けるようになっています。つまり工作するワークの方も傾くので、少し不安定な姿勢で作業をすることになります(写真右)。しかし、ブレードの方を傾ければ、ワークも作業者の姿勢を変えることなくいつもと同じように安定して作業ができます(写真左)。これも驚きの機構です。
特徴3 ブレード脱着機構に工夫があり、ピンレスのブレードを挟み込むネジ(回しやすい形状) で締めて小さなレバーを上げるだけで取付完了。外すのはその逆で、さらに上部のアーム部分を上に上げてワークからブレードを外すことができるので、切り抜き作業がとても楽にできます。使ってみると本当に楽ちんです。このヘッド部分だけでも発売されていて他のブランドの機種にも取り付けられています。
以上のような巧みな機構と希少性が私の感性(要するにメカ好きで新しい物好きの心)を揺さぶり、手を出してしまったということです。
さて、衝動的に手を出したものの、届いた荷物はとても重くて、工房に運ぶだけでヘロヘロです。本体の重さは約25kgです。問題は、重くて持ち上げるのが大変なことだけでなく、そもそも現状で工房内に新しい糸ノコ盤を置くようなスペースがありません。
まず、置き場所ですが、
いろいろ考えた末に出てきたアイデァは、現在使っている集塵用のエアーフィルタ(JET社のエアーフィルター)を横に倒して床に置き(その状態でもエアーフィルターとしては機能します)、その上に糸ノコ盤を置くことです。30センチ程度の低い椅子の座って十分に作業ができるようになります。
ところが、糸ノコ盤の重さでエアーフィルターが壊れてしまいそうです。そこで、木材で丈夫な箱を作り、エアーフィルターを収納し、その箱の上に糸ノコ盤を置くことにしました。箱にはキャスターを付けたので、使わないときには簡単に端っこに押し込んでおくことができます。
次に、置き場所への移動
その箱の上にどうやって重い糸ノコ盤を梱包から出して移動させるかという難題です。何しろ頭だけでなく体力の減退も著しい老人一人ボッチの工房ですからこういう時は大変なんです。でもこれも悩めばアイディアは出てくるものですね。本体を梱包箱を開けて持ち上げて出すのではなく、梱包箱の側面を切り裂いて窓を開けて、引きずり出すということです。都合の良いことに、本体は輸送時のがたつき防止のために大きな合板に仮止めされて梱包箱に納まっていました。そこで、その合板ごとズルズルと引きずり出して、エアーフィルタを収めた箱をそばに置いて、ズリズリしながら移動させました。箱(台)の上に移動した後で仮止めされている合板を引き抜いて完了です。台への固定は、防振用に別途用意したゴムワッシャーを噛ましてボルトとナットで適度に締めました。
試運転して、さっそく一つ作品を作ってみました。Artisan Pirateさん(北米ノースカロライナの糸鋸盤を用いたプロの木工職人)のアップした作品のパターンを入手して2×4材を使って切ってみました。
駆動音が静かで振動も少ないので、私のように真夜中に作業することの多い夜行性アマチュア木工家にとっては助かります。バンドソーを使い始めた時にも同じことを感じました。この糸ノコ盤とバンドソー、ドリルスタンド(ボール盤)を使っていれば、気兼ねなく真夜中の作業に没頭できるし、機構的にも高齢者に優しい比較的に安全な機械です。そのせいか、糸ノコ盤を使った作品作りを紹介している外国のYouTubeを見ていると女性の方(例えば、1、2,3)が多いのに驚きます。昇降盤は音も大きいし刃が目の前で豪快に回っているのでちょっと恐怖を感じますよね。私はもう20年ほど使っていません。
さて、試し切で作った作品の仕上がりは上々で、サンプルで入っていたブレードを使ったのですが切削面はかなり綺麗で、ほとんどサンディングを必要としません。
いつものように、新しい機械の導入紹介の動画をアップしました。ご覧ください。
メカニックに惚れ込んでの購入ではありますが、これで作品の幅が広がりそうです。グッジョブです。