おばあちゃまの初ディズニーランド
すばらしい車いす対応
これからご家族を車いすでお連れになる方の参考になればと思い、体験を少し詳しくお話します。
我が家に滞在しているおばあちゃまとディズニーランドへ行ってきました。84歳の初ディズニーです。あまり興味がないのではと思っていたのですが、ちょっと遠慮していたふしのあることが分かりました。
おばあちゃまは腰がやや曲がり、膝の関節が痛くて薬で抑えている状況です。シルバーカー(お買い物等に使うバック付きの4輪車)を押していれば数百mの買い物へ行くことができ、杖を使えば歩いてお店に入ることもできます。でもどうしても時間がかかります。私たちの足手まといになるのでないかと遠慮していました。
私ももうこの歳になると長い行列に並んで人気のアトラクションにせっせと乗るつもりもなく、疲れたらおばあちゃまとお茶していたいし、園内の雰囲気を楽しんで食事だけして帰ってきてもいいし ということで、このたびの誘いに乗ってもらいました。
実は一つ隠し玉がありました。車いすを借りることです。でも、おばあちゃまは車いすに乗るのを良しとしない性格なので拒否されるのでないかと言い出せずに出発の日を迎えました。
妻と娘も連れて(と言うよりも私が仲間に入れてもらって)お昼前に到着しました。まず感心したのは駐車位置までの案内です。駐車場の入り口ゲートで、長距離歩行の難しい高齢者がいることを告げると、青い紙をフロント・ウインドウとワイパーの間に挟んでくれました。それを見た係の方の指示に従って車を進めて行くといつの間にか入場ゲートに一番近い駐車位置に到着していました。乗り降りに楽なように一台一台のスペースが広くとってあります。
と言っても、そこから入場ゲートまではやはり結構歩きます。その間に恐る恐る車いすを借りることを切り出しました。意外にあまり抵抗なく「イイわよ」という返事が返ってきました。やっぱり、歩くのが遅くなるので遠慮しているのだなぁ と察しながらも、「よし初車いすも試してみましょう」という前向きの会話を交わして入場ゲート手前の右側にある車いすレンタルの窓口へ向かいました。
レンタルの看板の先に青いホイールカバーの車いすが並んでいました。よく見るとホイールカバーにはミッキーマウスが手を広げて待っています。レンタル料金1日500円也。ここまで使ってきたシルバーカーは預かってもらいました。
おばあちゃまの乗った車いすを押して入場すると時刻は正午をすぎていました。先ずはウオルト・ディズニー像の前で定番の記念写真です。
ディズニーランドの雰囲気を味わいながらウエスタンランドを進み、蒸気船マークトゥエイン号の桟橋に到着。キャストの方は車いすを見るとすぐに反応し、一般の列の横に待たせてくれました。乗船時には船と桟橋の間に段差を無くす踏板を置いて、車いすに乗ったまま渡らせてくれました。手際がよいのと対応が親切なので安心しました。船のデッキでは自由に車いすで動けます。先頭に近いところに陣取り、ゆっくりと楽しむことができました(歩いてきた疲れも取れました)。
マークトゥエイン号を降りた後向かったのはウエスタンリバー鉄道です。少し戻るような経路になりますが車いすでスイスイと移動。鉄道の駅はかなり見上げる高いところにあります。さてどうしたものかと思っているときに、目のあったキャストの方が笑顔で近づいてきてくれて、対応案を考えてくれました。
先ず、同伴者の二人が一般の行列に並びます。20分程度の待ちです。この二人が階段上の駅の改札口に近づいたら、車いすの付添い者へ電話で連絡します。するとキャストの方が改札口付近まで別ルートで車いす組を案内してきてくれて合流し、一緒に改札口を通過できました。これは、なかなか理にかなった手順ですね。一般の列に並んでいる方々から見ても不公平感はないと思います。改札を通ってから、一列車待って、先頭車両の先頭の席に座らせてくれました。車いすはホームに置いおきます。戻ってきたときも車いすの前に停車するのですぐに乗れます。帰りは4人そろって別ルートで出してくれました。なんと出入り口を少しカモフラージュした目立たないエレベータがありました。
調子よくアトラクションを2つも乗れたので次は遅い昼食です。ザ・ダイアモンド・ホースシューです。前日に運よく席の予約が取れていました。スムーズに車いすのまま中に入ります。おばあちゃまは車いすをおりて杖を使って歩けるので、邪魔にならないところに車いすを置いて食事のテーブルまで歩きました(10m程度です)。歩くのが困難な方の場合は多分車いすのままテーブルに着けるのだと思います。
美味しい食事と楽しいショーを観た後は、少し園内を散策してから、イッツ・ア・スモール・ワールドに向かいました。
最も高齢者には刺激の少ないアトラクションと考えて何も心配せずに入りましたが・・・。車いすのままボートに乗るところまで案内してくれましたが、実はボートに乗り込むのに苦労しました。車いすを降りて、乗り込むのですが、水面が一段低いのでボートの床までの最初の一歩が数十センチ下がります。そしてボートの側面が高くできているので、大きくまたいで乗り込むことになります。健常者でもヨイショという感じなので、脚が十分に曲がらないおばあちゃまは大変でした。どうにか二人係で抱えて乗り込むことができましたが、ちょっと膝が痛かったのではないかと申し訳ない思いでした。アトラクション自体は園内でも最も穏やかで高齢者向きなのに、この乗り降りの仕組みはちょっと残念ですね。
次はホーンテッド・マンションです。「怖いですよー」とおばあちゃまを脅かしながら入り口まで行くと、キャストの方が4人一緒に別ルートで案内してくれました。この別ルートがホーンテッド・マンションらしくちょっと不気味な細い通路でした。通路の先でしばらく待って、開いたドアを入るとそこはもうアトラクションスタートの大広間でした。車いすを押しながら、ちょっと怖そうな雰囲気を漂わせる部屋をしばらく行くと乗り物にたどり着きます。ここでは、専用の乗降場所があり、車いすを降りてすぐに簡単に乗り込むことができました。戻ってくると私たちだけ先に専用の乗降場所で下してくれます。キャストの方の、「ゆっくりでいいですよ」という優しい声掛けがほっとしますね。
おばあちゃまに「怖かったでしょう」と聞いてらニコニコしながら「楽しかったじゃないの」という返事。歳をとるとお化けは怖くないみたいですね。私もそうです。
そうこうしているうちに夕刻となりました。夕食はクリスタルパレス・レストランです。ここも予約しておきました。入り口受付近くに車いすを置いて窓際のテーブルに着きました。もう、車いすシステムにもずいぶんと慣れてきました。おいしい夕食を楽しみながら窓からエレクトリカル・パレードを堪能できました。
この後も、3Dが体験できるミッキーのフィルハーマジックや、観客との会話が不思議なぐらいうまいスティッチ・エンカウンターにも入りました。それぞれ車いす対応の席が設けられていて同伴者も一緒に楽しめました。
壮大なCelebrate Tokyou Disneylandのプロジェクションやディズニー・ライト・ザ・ナイトの花火も満喫できました。
すっかり夜の景色になったディズニーランドですが、折角なので少し散策することになりました。
帰る時刻となりました。出口の左手にあるレンタル窓口で車いすを返却し、預けておいたシルバーカーを受け取って駐車場まで、来た道を歩きました。
2つ3つのアトラクションと食事だけでも楽しめればと思って実行した、おばあちゃんの初ディズニーランドでしたが、車いすでの行動が思いがけずスムーズで、おばあちゃまも楽しそうだったので、こんなに夜遅くまで遊んでしまいました。
ディズニーランドの車いすについては話には聞いていましたが、実際体験してみると(付き添い者として)、キャストの方々の対応がすばらしくて、こちらが気兼ねすることなく付き添い者も普通に楽しむことができました。ディズニーランドは、日本の遊園地サービスに、マニュアル化を徹底して導入したことで有名ですが、車いすや高齢者への対応は必ずしもマニュアル化では対応できないと思います。混雑具合や天候、そして高齢者の状況によってもそれぞれ異なった臨機な判断が必要で、かなりアナログな世界です。キャストの方々がマニュアルを匂わせずに、一つ一つ対応を一緒に考えながら、丁寧に気持ちよく行動してくれたことに感謝します。ありがとうございました。