クラシックラジオの製作 -ミゼット型-
その3 ネット張りと塗装、そして完成
いよいよクラシックラジオの製作も大詰めに来ました。思いつきで作った真空管ラジオが懐かしい音を出してくれるので、ケースも作ろうと気楽な気持ちで始めたのですが、結構大ごとになってしまいました。既報 その1、その2 と進んでひと月がかりでやっとここまで来ました。
残る仕事は、
1.スピーカーネットの張り付け
2.塗装
3.組み立て
4.外観撮影
となります。
1.スピーカーネットの張り付け
スピーカーネットはネット取り付け板に張って、この板を前板に裏から取り付ける構造になっています。問題は、ネット取り付け板にネットの生地を張り付ける方法です。ある程度の張力を持たせて生地の目をそろえて綺麗に張りたい、ということで、転写をまねた方法を思いつきました。スピーカーネットの生地には、専用のサランネットがありますが結構高価なのと、もっとアンティークな雰囲気を出したいので、妻からカーテンに使った余りをもらいました。しっかりと張るために分割して作業することにしました。
手順は以下の通りです。
a. 一つの分割ごとにその大きさに合わせた板(分割板)を用意します。
b. 分割板の表に樹脂シート(クリアーファイルを流用)を両面テープで張る。
c. 分割板の表をネット生地で包み込んで瞬間接着剤を使って板の裏でのみ固定する。このとき、生地の目をそろえて、ある程度の張力を加えて綺麗に包み込むことが重要。
d. ネット取り付け板の該当する分割部分の周囲に木工ボンドを塗り、その面に分割板の表面(生地の面)がつくように押さえて圧着する。
e. 接着剤が乾いたら、分割板の側面の周囲にカッターの刃を入れて生地を切りはなして、分割板を取り除く。
f. ネット取り付け板に接着されたネットの周辺の余った生地を切り取って整える。
この方法のミソは、e.のところです。ボンドが乾いても樹脂シートには接着されないので、分割板を剥がすと、生地がネット取り付け板に接着されたまま残ることです。c.で分割板にセットしたそのままの状態で生地をネット取り付け板に張り付けることができます。今回は、3つに分割したのでこの作業を3回行います。ネットを張り終えたネット取り付け板は、各部の塗装が終わったあとで前板に裏から取り付けることになります。
2.塗装
実は塗装が一番苦手です。工作を終えて綺麗に出来上がった作品を、塗装に失敗して台無しにしたことが何度もあります。オイルフィニッシュは比較的に失敗が少なくて好きですが、今回のこのミゼット型のラジオは、昔のモデルを見るとどれもブラックから濃いエンジ系で着色されているので、オイルフィニッシュではちょっと難しいかなぁというところです。
そこで、着色には顔料系の着色剤を使い、ウレタン系のクリヤーで仕上げ塗りをすることにしました。顔料系は色を混ぜると深みが出ると言われています。今回はブラックとレッドを混ぜました。使ったのは、和信化学工業 シークステインPG 0.9L のブラックとレッドです。混合比率を変えていくつかのサンプルを作りました。光の当たり具合で異なりますが、かなりブラックに近く、少し赤みがかかった色味がアンティークらしい雰囲気が出て気に入りました。割合で行くとブラック:レッドで1:2程度です。
この顔料には石油系の溶剤が使われていて、ボロ布に付けてこするだけで綺麗に着色されていきます。ムラをなくすために2度ふきしました。
顔料が十分に乾燥したら、防水を兼ねた上塗りです。和信ペイントの水性ウレタンニスつや消しクリヤーを使いました。油性か水性か悩んだのですが、上塗りの際に下地の顔料が溶けて汚くなるのが怖かったので水性にしました。が、後で判明しましたが、スプレーガンを使ったので、目詰まりのことを考えたら油性の方が良かったのかも知れません。
今回は気合を入れて、スプレーガンを使うことにして、久しぶりに、コンプレッサーを出してきました。、スプレーガンも分解掃除を行いした。
ウレタンニスを吹き付けると、しっとりとした落ち着いた表面が現れます。水性で薄いので原液をそのまま使いましたが、それでも1回の吹き付け量は少ないです。4-5回繰り返して吹き付けました。乾燥時間を含めて一週間ほどかかりました。
水性で原液を使ったせいか、5分も使っていると目詰まりが始まり、スプレーの勢いが低下します。毎回、スプレーガンの掃除をするのが大変でした。油性塗料を薄めて使った方がこのような目詰まりは起きにくいように思います。
胴枠、前板、前板両脇の飾り、そして台座のそれぞれの塗装を終えて、組み立てに移ります。
3.組み立て
先ず、おもて面となる前板に裏からネット取り付け板をネジ止めします。ネット取り付け板にはスピーカ-を取り付けるための丸い枠を一緒に止めておきます。
次に、台座の上に胴枠と前板をはめ込み、前板を胴枠にネジで止めます。胴枠は台座の裏からネジを入れて止めます。
いよいよハードウェアーの組み込みです。
最初に、スピーカーとラジオ本体を組み込みます。スピーカーはあらかじめ前板に取り付けておいた丸い枠の上からしっかりと前板に向けてビス止めします。16cm径の大き目のスピーカにしたのでかなり重たいです。ラジオ本体はもっと重量があるので、台座にしっかりとねじ止めします。
ラジオ本体を挿入したら、マジックアイと2つのスイッチを取り付けます。音量つまみとバーニアダイヤルはラジオ本体から伸ばした延長ロッドを介して取り付けています。裏板をネジ止めして完成です。
4.外観
超簡単な紹介動画を1本作りました。
左側にある緑色に輝いている猫の目のような丸い部分はマジックアイと呼ばれる同調指示管です。これは昭和2~30年代の真空管ラジオによく使われていたようです。緑色の輝きの中に扇状の影があり、同調するとこれが狭まります。音だけでは選局が不安なときに役立ちます。左右の2つのスイッチは、左がマジックアイのON/OFF用です。マジックアイは真空管の一種ですが蛍光面の劣化が早くて通常の真空管よりも寿命がずっと短いので、節約して同調が済んだ後はOFFにしておきます。
右側のスイッチは、音質の選択用で3段階のスイッチになっています。作った5球スーパーヘテロダイン方式のラジオは音声の周波数帯域が広くて、現代のラジオ放送の高音質な音楽番組を十分に楽しむことができます。しかし、反面、昔のラジオに偲ばれる帯域の狭い落ち着いた音を楽しむには不向きです。そこで簡単なハイカットフィルターの回路を加えて音質を3段階に切り替えられるようにしてあります。これで秋の夜長もゆったりと耳を傾けていられます。
中央の大きなダイヤルは、同調用のバーニアダイヤルです。これも昭和の時代のラジオや通信機器によく使われていたダイヤルです。なんとなくレトロ感がありますが、機構的には優れもので、金属円盤を重ね合わせて回すときの摺動(しゅうどう)だけで、回転角度を拡大(縮小)しています。歯車を使っていないので刃の隙間で生じる回転ムラやバックラッシュもなく大変スムーズに微調整ができます。今回使ったのは倍率10倍です。
中央、バーニアダイヤルの下にあるのが電源スイッチと音量を兼ねたボリュームつまみです。最初は適当にあつらえたつまみを付けていたのですが、「そのツマミがなんだか現代的ね」の妻の一言がひっかかり、ヤフオクで古いラジオのツマミを探して調達しました。レトロ感もあり正確にはわかりませんが年代的には相応しいような気がします。
今回の作品もいずれ紹介ビデオにしてYouTubeにアップするつもりですが、ひとまず完成です。
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