A journey of a thousand miles begins with a single step – Woodworking and Photos

むささび工房ブログ

不思議な動きをする階段昇降機がやってきた
ティッセンクルップ昇降機(ThyssenKrupp)

2020/07/13
 
stair-lift
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 おばあちゃまとの一緒の生活を始めて半年が過ぎました。右ひざに人工関節を入れる手術のあとリハビリテーションを続けてきました。体力は順調に回復してきているのですが、寄る年波かやはり歩行には補助が必要です。家の中の生活は、寝室とお風呂が2階にあり、食事や家族との団らん、そしてリハビリテーションは1階が中心です。
NHKの朝ドラの頃に軽い朝食を済ませて階段を下りて、夕食後しばらくテレビを観てから2階へ上がります。少なくとも1日に階段を1往復しなければならないのですが、かならず私か妻が、ときには二人で補助をします。それでも足を滑らすと大変なことになるのでおばあちゃまも補助する側も緊張します。妻も私も若くはないので自分の腰もかばいながらの補助です。そしておばあちゃまは「わるいわねぇ」と気兼ねをします。
 ということで、どうしたら良いかと悩んでいたのですが、思い切って階段に昇降機なるものを付けることにしました。家庭での介護用の階段昇降機というのがあり、調べたら既設の階段に比較的簡単な工事で付けられることがわかりました。
メーカには国内外数社あるようで、下記のようなところを中心にあたってみました。

大同工業(株)の「楽ちん号」
シンテックス(株)の「タスカル」
クマリフト(株)の「自由生活」
Stannah社(イギリス)の「スターラ」
ThyssenKrupp社(ドイツ)の「フロー」(シュプールという名称で扱っている販売店もある)

それぞれ製造元と商品名を書いたつもりです。販売店は各社に直営や代理店があります。
どの昇降機もバッテリー駆動で止まっているときに充電しています。電動自転車と同じですね。
我が家ではThyssenKrupp社の「フロー」(正確にはフローⅡ)にしました。機械の性能や耐久性については使ってみたわけではないので比較できません。決め手はデザインと機構の面白さです。ちょっと未来を感じさせるオシャレなデザインなのと、一本レールの上をすごく巧みに動いて行く姿がとっても面白いのです。

レールの角度や曲がりぐあいにかかわらず椅子の座面は常に水平に制御され、椅子の向きは椅子が走行している位置に合わせて好きな向きになるよう要望に応じてプログラムをセットしてくれます。例えば、真下を向いて移動するとちょっと怖いし、真横にして移動すると90センチ幅の階段でも歩く人とすれ違うのが難しくなります。乗り降りの時は椅子を真下(または真上)に向けて、移動するときは怖くない程度に階段下に向けておけばすれ違いの幅も確保できます。使わないときの停留位置では真横を向かせて座面を折りたたんでおくことができます。プログラムされたとおりに向きを変えながら水平を保って移動していく姿が、なんだかロボットみたいでもあり可愛くもあり、そんな機構が気に入ってしまってこれに決めました。
 依頼すると階段の計測をして見積もりを出してくれます。その計測がまた面白いのです。メジャーで測るのではなく、階段の要所要所に位置を示す札(トランプのカードのようなもの)を置いていき、一眼レフカメラでそのカードが全部写り込むように、階段の写真を数枚とります。それをデータとしてパソコンに読み込ませると計測は終わりです。プログラムが自動的に計測結果を出力してきます。見積もりもこの結果からはじき出されます。
見積もりを確認して契約発注すると、その計測データがオランダにある工場に送られて我が家の階段に合わせた機材一式(レール、動力部分、椅子、階段への取り付け金具、充電ポイントなど)の調達と製作が始まります。出来上がった機材一式は日本へ空輸されてきます。発注してから工事日まで40日程度でした。
 今日はその工事日です。おばあちゃまはリハビリセンターへ行っていて留守です。10時ごろから機材が運び込まれます。レールとなるパイプや階段への取り付け金具、そして肝心の椅子とその動力部分などです。

まず、レールを設置するために仮置きが始まります。工事担当の方が手際よく置いていきます。

計測データに従って工場で正確に作られた機材は、所定の位置にぴったりと置くことができたようです。椅子の停留位置は、乗降のための階段上と下に加えて、普段、邪魔にならないように椅子を置いておくための位置が2か所途中にあります。それぞれが充電ポイントにもなるので、電源からパイプの中を通して充電ポイントへ配線がされます。

 

工事担当の方は、レールが正確に置かれていることを何度も測定しながら確認します。確認が終わると、太い木ねじを使って取り付けていきます。階段とフローリング(階段上下のみ)に穴が開くわけですから緊張しますが、覚悟の上です。インパクトドライバーの軽快な音と共に次々とねじが絞めつけられていきます。これでほぼお昼休みになります。

 

 午後は、動力部分を乗せて走行の確認が始まります。動力部分にはメカニックとともに電子機器がびっしりと入っています。椅子を乗せて工事担当の人が乗った走行確認を何度も行います。パイプと取り付け金具の微調整を行っているようです。

 

午後の工事は1時間半ほどで終わり、最後に使用方法の説明を受けて完了です。使用方法はすごく簡単なのですが、電子機器ですから万一動かなくなった時のリセットや、緊急降下が必要なときの手順など重要な説明もありました。

 ということで、おばあちゃまがリハビリセンターへ行っている間に、設置工事は終了しました。
夕食後、2階へ上がるときに初めておばあちゃまに階段昇降機を使ってもらいました。説明を簡単にしただけですが、一人で椅子に座り、シートベルトも絞めて、発射オーライとなりました。大成功です。
 我が家の介護はまだまだ入り口ですが、始めてわかった重要なことの一つは、介護される人が気兼ねしないような環境を作ることです。リハビリセンタの方やリハビリに来てくれる方々は、おばあちゃまに沢山声をかけながら明るい雰囲気を心がけて作業を進めてくれています。リハビリセンターから迎えに来てくれるマイクロバスには、車いすごと乗り込めるリフトが付いています。
介護者が力を使って辛そうな顔をして作業をしていたら介護される人だって気兼ねをしますよね。楽しく話しながら気兼ねなく介護を受け入れてもらうためにも、機械の力を借りることは重要だと思います。
おばあちゃまは、日中でも一人で自由に2階へ上がり降りてくることができるようになって喜んでくれています。

neko

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