工房紹介動画を作りました – 機関車トーマスが案内します-
Workshop tour by Thomas the Tank Engine
– Small shed but exciting place –
お正月の思い付き
ふるさと納税の返礼品に鉄道模型が沢山出ています。鉄道ジオラマは模型工作の趣味も生かせて面白そうだなと思っていましたが、その世界には凄いマニアが沢山おられて今更とても入っていけそうな状況ではないこともわかっていました。でもちょっと走らせて遊んでみたいなぁという子供心がどこかに残っていました。
そんな時に、木工作品のYouTubeを見ていたら、海外でアマチュアの工房を紹介している動画が多いのに気づきました。世界中でWorkshop tourと称して流行っているようです。北米などのはめちゃくちゃ広くて設備もプロ並みに整っていて羨ましいかぎりですが、中には親しみやすい(ちょっと頑張れば手の届きそうな)工房も沢山あって参考になります。
これまで、むささび工房の紹介はあまりしてきませんでした。小さな山小屋のような木造小屋のなかに結構多くの機材がひしめいていて、整理整頓もしていないので、人様にお見せするほどの工房ではないと思っていました。ところが、まったくの思い付きで工房紹介動画を作り始めてしまいました。その思い付きというのが、鉄道模型を走らせて動画を撮ってみようということです。やっぱり頭の片隅にある考えというのはどこかで結びつくのですね。
というわけで、今年の正月明けに、友人に送ったメールの中で、この発想を打ち明けてしまいました。友人の中には超のつく鉄道マニアもいます。すかさず、Gゲージ(レール幅45㎜縮尺1/22.5で、庭で走らせて楽しむような大型規格で高価なモデル)でやったら、と煽ってきました。その手には乗りませんでした。ただでさえ狭い工房にそんな大きなのを走らせたら私が動けなくなります。なにより資金がありません。
規格の選定
私の子供の頃は、OゲージとHOゲージしか知りませんでしたが、世界中にはいろいろな規格があるようです。現在日本で使えそうなのでも下記のようなものが見つかります。
Zゲージ:縮尺:1/220、線路幅:6.5ミリ
Nゲージ:縮尺:1/148 ~160、線路幅:9 ミリ
HOゲージ:縮尺:1/87、線路幅:16.5 ミリ
Oゲージ:縮尺:1/43・45・48、線路幅:32 ミリ
Gゲージ:縮尺:1/22.5、線路幅:45 ミリ
今日本で主流なのはNゲージのようです。日本の住宅事情にマッチしているのですね。ということで、最初Nゲージの利用を検討しましたが、ダメでした。所有しているカメラ(DJI OSMO Pocket, WiFiアダプターを付けて約130グラム)がどうにか載せることは可能ですが、不安定でとてもカーブを曲がれそうもありませんでした。狭いむささび工房の中にレールを張り巡らせるのですから小さい方が良いのですが、Nゲージは断念しました。結局もう一回り大きい規格のHOゲージを使うことになりました。
車両の選定
どんな車両を走らせようかと悩みました。電気機関車にしようか蒸気機関車にしようか。特に鉄道に趣味があるわけではないのですが、なんとなく蒸気機関車の方が工房には雰囲気があってよいかなぁと思っていた時に、世界中で誰もが知っている蒸気機関車を発見しました。そうです、あの機関車トーマスです(Tomas the Tank Engine)。米国のバックマン(Bachmann)という模型会社にHOゲージの機関車トーマス商品がありました。国内の代理店もありました。KATOという国内の鉄道模型大手でも扱っています。ということで、海外うけも狙って機関車トーマスにソドー島から来てもらうことにしました。
カメラを載せるために、貨車たちの中でもリーダー各で特にいじわるな性格と言われているスクラフィーを使いました。
早速カメラを載せてみました。ちょっと工夫すれば前方撮影だけでなく横向きの撮影も可能と判断しました。サンディング用のスポンジブロックをカッターで加工してカメラをスクラフィーに取り付けられるようにしました。
その他に、ノースウェスタン鉄道(ソドー鉄道)の局長のトップハム・ハット卿(Sir Topham Hatt)にも出演を願いました。
線路工事
これが一番大変でした。目線の高さ(約1.5m)に張り巡らせて、下を眺めながら走行して工房紹介ができるように考えました。そのために、いろいろな個所で線路を吊り下げなければなりませんし、なにより、線路の土台をしっかり作らないと、車両が傾いたり脱線して1.5m下に落下してしまいます。そこで土台には10mm厚のランバーを使い、90cm長の土台を何本も作り、繋いで長さを調節できるように工夫をしました。
工房はもともと2つの小屋だったのを繋いであるので、中で2部屋に分かれています。バンドソーやサンダーの置いてあるエリア(The bandsaw & sanders room)と、木工旋盤とワークベンチのあるエリア(The woodworking lathe & workbench room)です。線路はこの2つの部屋を8の字に走るようにし設置しました。そのため中央(2つの部屋の境目)に線路が交差するところが必要になり、写真のような状況になります。
カメラを積んで安定して走行できるようにするには、レールの接続、平坦度や傾斜などにかなり気を使わないとなりませんでした。とにかく試行錯誤の連続で、試験走行ではトーマスが1.5mの高さから何度も落ちました。幸いバックマンのトーマスもDJIのOSMO Pocketも大変堅牢で壊れることはありませんでした。
もう諦めようかと思いつつも、まさに乗りかかった船ということで頑張って完成にこぎつけました。すごく安定して走るようになりました。
撮影
やっと撮影開始です。せっかく8の字で連続して周回できる線路を構築したので、なるべく少ないtakeで撮りたいと考えました。カメラのOSMO Pocketのジンバルはすごく優秀で、車両の揺れや振動はほとんど映像には現れませんが、レンズを大きく真横を向かせることは構造上できないので、前方(進行方向)向きの映像用と、工房内を上から見下ろすための進行方向に対して横向きの映像用では、スクラフィーへのカメラの置き方を変えて撮ることにしました。
カメラリハーサルを何度も行い、以下のような構成としました。
1.タイトルとイントロ: むささび工房のスチル画像の後、遠方から機関車トーマスが迫ってきて通過するところを撮影。
2.ツアー出発: Musasabi workshop sta.で貨車スクラフィーがカメラを積んで待機しているところへトーマスが他の連結車両と一緒に後退してきてガチャンと連結完了後 出発オーライ。
3.1周目:最初の1周は進行方向にカメラを向けて積み込み、2つの部屋の構成を説明しながら8の字に走行。
4.2周目:カメラを進行方向に直角に(横に)、且つレンズを斜め下向きにして、工房の中を見渡すように走行。Bandsaw & sanders room は左回りなのでカメラを左向きに、Woodworking lathe & workbench roomは右回りになるのでカメラを右向きに、それぞれ乗せ換えて2takeで撮る。途中の交差するところで向きが変わったように編集で映像を繋ぐ。
5.3周目:進行方向にカメラを向けて積み込み、夜明けになって、急いで駅へもどるような状況を演出。(撮影では実際に窓から朝日が射しこみました)、
6.ツアー終了:最初の出発地点(Musasabi workshop sta.)に戻ってくるトーマスを正面から待ち受けるように撮影し、到着後、挨拶のキャプションでツアー終了。
7.MAKING編:スチル画像で、カメラを貨車スクラフィーに取り付ける工夫と、線路上での状態を紹介する。線路の構成がわかるようになるべく全体を映して、工房内をトーマスが3両の貨車を曳いて走行する様子を映し出す。
8.エンディングとクレジット:トーマスの曳く3両がMusasabi workshop sta.の前を通り過ぎた後、駅の名前を映してフェードアウト。灯りのともる工房の窓を外から撮ったスチル画像をバックに、クレジットを流して完了
短い動画ですが、以上のようなことをなるべく細かく決めてから撮影を始めないと撮り直しが多くなります。それでも、3日ほどかかって沢山撮りなおしました。
四苦八苦の末、出来上がった動画がこれです。
バックマンの機関車トーマスは走行中、音をリアルに出してくれるのでツアー本編ではBGMを入れませんでした。木工ツール等の説明は、マニアならば見ればわかるのですが、目線を引くために字幕のように入れました。説明を忘れたところが一か所あります。Woodworking lathe & workbench roomの冒頭に窓際に見えるラジオです。195*年のZENITH社(米国)の真空管ラジオです。私が生まれた年に米国で製造されたアンティークですがまだよく受信して健在です。お年寄りのアメリカ人なら見覚えがあるかもしれないので目線を引くつもりでいました。アップ後に字幕が追加できるようでしたら試してみたいと思います。
動画をアップしてから2日後に次のようなコメントが入りました。多分アメリカの同好の士でしょう。
”Loved this! Makes me want to run a train around my shop. Your shop is very cosy and well equipped. Thanks for posting.”
うれしいです。やっぱり、機関車トーマスはword famousなんですね。
作品2つ分ぐらいの労力と時間と資金がかかり大変でしたが、童心に戻って無心に取り組むことができました。ひょっとしたら、むささび工房はピーターパンのお話に出てくるネバーランドなのかもしれませんね(我が家のピータパンもウェンディも歳をとりましたが・・・)。